オケゲム(Johannes Ockeghemフランドル1410頃-1497)のレクイエムは、史上最古のポリフォニー・レクイエムといわれるものである。
中世のあいだは死者のためのミサは、グレゴリオ聖歌によって演奏されてきたが、デュファイやオケゲムによって初めて多声化された(残念ながらデュファイの曲は、残されていない)。
オケゲムの「レクイエム」章のひとつ(トラクトゥス)に詩篇42「鹿が谷川を慕うごとく」が取り入れられている。
「魂は神を慕いあえぐ」「お前の神はどこにいる」など神に見放されてしまう絶望の時期の詩である。
死という絶望を前に神の恵みを信ずる祈りを、嘆くことも叫ぶこともなく音楽は黙々と続く。
また、モテトゥス「けがれなき神の母Intemerata Dei Mater」は
聖母に関するモテットのひとつであるが、曲が大変美しい。
5声で歌われる。楽園を追われた人間の、「過渡的な存在」から天国という「永遠への国」への復帰という切なる願いは、やがて死に至る人間の深い祈り。カトリックの特有の文化であるが、罪深きエヴァの子である人間は、イエスへのとりなしをけがれない聖母マリアに哀願する。
2025年03月13日
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